*
文化祭へ向けた合唱部の練習初日、朋花ちゃんによって指定された公民館へ、かなたはシンセサイザを背負ってやって来た。
「部長。桐生先輩が来ました」
「本当!?」
合唱部員に配布する譜面を用意していた私と朋花ちゃんは、驚いて顔を上げる。
エントランスまで行くと、既に集まっていた部員とかなたが言葉を交わしていた。
「桐生くん、来てくれてありがとうございます」
「感謝してよ。ここまでシンセ背負って来るのどんだけ大変だったと思ってるの」
相変わらずだぼだぼのTシャツの裾で額の汗を拭うと、かなたは私の方を向いた。
「で、ヒロインはどうしてここにいる訳?」
「ま、まあ……マネージャーってことでよろしく」
伴奏者が見つかった以上私自身はお役御免だったが、何となくステージを見届けたい思いから朋花ちゃんに頼んで練習を見学させてもらうことに決めていた。
「海羽さんも合唱メンバーに入ってもらって構わないのに」
気を遣ってくれる朋花ちゃんに、「いや」と私は首を振る。
「私はいいんだ。コンサートを成功させるために何か力になれればそれで充分」
「折角の夏休みなのに、お人好しにもほどがあるでしょ……」
文化祭へ向けた合唱部の練習初日、朋花ちゃんによって指定された公民館へ、かなたはシンセサイザを背負ってやって来た。
「部長。桐生先輩が来ました」
「本当!?」
合唱部員に配布する譜面を用意していた私と朋花ちゃんは、驚いて顔を上げる。
エントランスまで行くと、既に集まっていた部員とかなたが言葉を交わしていた。
「桐生くん、来てくれてありがとうございます」
「感謝してよ。ここまでシンセ背負って来るのどんだけ大変だったと思ってるの」
相変わらずだぼだぼのTシャツの裾で額の汗を拭うと、かなたは私の方を向いた。
「で、ヒロインはどうしてここにいる訳?」
「ま、まあ……マネージャーってことでよろしく」
伴奏者が見つかった以上私自身はお役御免だったが、何となくステージを見届けたい思いから朋花ちゃんに頼んで練習を見学させてもらうことに決めていた。
「海羽さんも合唱メンバーに入ってもらって構わないのに」
気を遣ってくれる朋花ちゃんに、「いや」と私は首を振る。
「私はいいんだ。コンサートを成功させるために何か力になれればそれで充分」
「折角の夏休みなのに、お人好しにもほどがあるでしょ……」