夕陽の差し込む商店街を、朋花ちゃんと肩を並べて歩く。ファミレスへ向かっていた時と比べ、彼女の足取りは段違いに軽かった。

「良かったね、伴奏者が見つかって」
「はい! 海羽さんが紹介してくれたお陰です。本当にありがとうございました」

 白い肌が鮮やかに紅潮するさまはさながら絵本に登場する白雪姫のようだ。表情をほころばせた後、ところで、と朋花ちゃんは首を傾げた。

「桐生くん、海羽さんのことをヒロインって呼んでましたよね。あれどんな意味なんですか?」
「ああ、それはーー」

 ちょっと長くなるけど、と前置きし、私は自らの身の上を彼女に打ち明けた。

「え、じゃあ海羽さんが合唱をやっていたって言うのも、設定だったんですか!?」
「ううん、合唱部だったのは本当。一応私も朋花ちゃんと同じ部長で、全国大会を目指してたんだよ」
「すごい! 強い学校に通っていたんですね」

 今となっちゃ寂しい思い出だけど。口に出しかけた言葉は寸手のところで押し留めた。