「そう言えば生徒会長と初めて会った時、四月からずっと私の家に行きたかったけど辿り着くことができなかったって話してたような」
「多分その人と同じような状況だと思うよ」

 もぐもぐするかなたに、朋花ちゃんが畳みかけるように言う。

「じゃあ、その、登校を阻む『何か』が見つかれば、桐生くんは蒼遥の生徒として高校に通える訳ですよね」
「まあそうだけど……」
「だったら私が探します」

 彼女の言葉に驚いて振り返る。朋花ちゃんはかなたを真っ直ぐに見つめ、言葉を続けた。

「見つかるまで、合唱部は桐生くんが行ける場所で練習します。ピアノさえあれば、私達はどこでも歌えますから」
「朋花ちゃん……」
「私を含めた合唱部の三年生は、九月で引退することが決まっているんです。文化祭のコンサートは、私達が高校生として後輩と一緒にステージに立つことのできる、最後の晴れ舞台なんです。だから……」

 お願いします、そう呟いて、朋花ちゃんはテーブルに額をこすりつける。
 彼女の懇願を前に、かなたは面倒臭そうな表情で茶髪の伸びるうなじを掻いた。