乙女ゲームの世界に迷い込み、早くも四ヶ月が経とうとしている。

 季節は夏、そろそろ新入社員として仕事にも慣れて来る頃かと思われるものの――
 自分と言えば過ぎたはずの青春を再び経験する羽目になってしまっていて。
 一刻も早く元の世界へ戻りたいと思う一方、気付けばここでの日々の生活を謳歌してしまっている自分が相変わらず憎い。

 中間考査をなんとかクリアした私は夏季休暇を迎えていた。本来ならこの世界の仕組みを探求するなり(この世界から脱出するための)ロケットの一つでも開発するなりすべきところなのだが、体育大学への進学が決まっている風間くんや服飾系の専門学校を目指すきららちゃんをはじめ既に進路が決まっている周囲の友人と夏を堪能しているうちに、気付けばあっという間に休暇の前半は終わってしまっていた。


「ふう、朝から働いた!」

 今日はテスト明けからなかなか手が付けられていなかった部屋の掃除を済ませた。
 掃除機を片付けて時計を見れば、時刻は既に昼を回っている。今日はヒロミさんが外出で不在のため、昼食は一人で取ることになっていた。
 お腹の虫が鳴ったと同時に、私の体内では突然猛烈な食欲が湧き上がる。

(ハンバーグ……)
(ハンバーグが食べたい!!)

 過去にここまでハンバーグが食べたくなることがあっただろうか。
 なぜかハンバーグのことしか考えられなくなった私は、気付けば財布を掴むと無我夢中で外へ飛び出していた。