「祖父ってどういうこと？」
「実は僕の祖父……蒼遥高校の創立者なんです」
「え！？」
「あれ、海羽ちゃん知らなかったの？」

　一同が驚く中、きららちゃんとヨリだけが涼しい顔をしている。

「墓穴掘っちゃいましたね」

　苦笑いを浮かべると、水瀬くんは自らの身の上を明かした。

「祖父がそんな感じなので、僕、高校に入学した時から友達が一人もできなかったんです。コネで入学したとか、何告げ口されるか分からないって、陰口ばかり言われて。そんな僕を拾ってくれたのが、生徒会長でした」
「へえ、久我っていい奴じゃん」
「あ、ちょっと……！」

　笑顔で肩に腕を回した風間くんに、ヨリは困惑した表情で硬直する。
　賑やかな面々を前に、私は水瀬くんに話しかけた。

「たまには大勢で食べるのも楽しいよ。今日は皆でお昼にしよう」
「そうですね」

　どう考えても六人が座るには狭すぎるソファに無理矢理座り、私達はそれぞれの弁当箱を開ける。

「わ、水瀬くんのお弁当、それステーキ！？」
「はい。いつも実家のお手伝いさんが持たせてくれるんです」
「久我の弁当も美味そうだな。健康に良さそうだ」
「君の巨大なカツ丼とは違って、こっちは量より質だからね」

　普段は静かな生徒会室に笑い声が響き、窓の外からは微かに蝉の鳴き声が聞こえてくる。
　夏はもう、すぐ目の前まで迫っていた。