・
・【元気が出るメニュー】
・
「ニンニク擦って顔に塗りたくってやろうぜ」
冷たい声でそう言い放った琢磨。
「そんなカフェあるかーっ!」
「いや大丈夫、オミソに塗られればアイツも納得するだろ」
「私が塗りたくないわっ! そんな酷いことしたくないわっ!」
何かあれからずっと不機嫌だったな、コイツ。
まあいいや。
「琢磨が真面目に考えないんだったら、私一人で考えるからっ」
そう言ってから私はレシピの本を見始めた。
すると、琢磨が一息ついてからこう喋り出した。
「オミソって、サヨナのこと好きなのか?」
「……好きって何?」
「好きってそのまんまの意味だよ、一緒にいたいかって話」
「まあ琢磨よりはね」
「そうか……」
ん?
もっと強い反撃がくると思ったけども、何かテンションが低いな。
まあいいか、続けよう。
「琢磨って私に悪口言ってばっかりじゃん、それに比べてサヨナさんは優しい言葉をいっぱい掛けてくれるしっ」
「……」
「そりゃキザなところあるし、誰にでもそうやっているんだろうなとは思うけども、悪口言われるんだったら当然サヨナさんのほうが好きだよ」
あっ、何かつい琢磨と比較しちゃっていたな。
でもいいか、だって実際にそうだし。
……いや何か暗いな! 琢磨!
ちょっと言い過ぎたかな。
私はオトナなんだから、ちょっと優しくするかっ。
アメとムチってヤツだよね。
と、優しい言葉を掛けようとしたその時だった。
「ゴメン……つい、オミソのリアクションが面白くて……」
いっ!
「いや! そんな本気で謝んなくていいよっ! 何それ! らしくないよっ!」
「いや、そりゃ嫌われて当然だよな、ゴメン、でも今も一緒にいてくれてありがとうなっ」
そう言って憂いを帯びつつも精一杯微笑んだ、みたいな表情をした琢磨。
いや!
いやいや!
「全然らしくない! 何なのっ! ここは悪口のタイミングだろ!」
「何それっ、悪口言われたいのっ?」
「いや! そういうことじゃないけどさっ!」
「フフッ、やっぱりオミソは面白いわっ、ゴメン、ゴメン、今の全部忘れて」
そう言って琢磨もレシピの本を見始めた。
いやいや。
まあ。
謝ったことは忘れる気無いけども。
何だ、ちゃんと謝る気はあるんじゃん。
というかまあ、楽しいから悪口言っているってことね。
まあ心底馬鹿にしているわけじゃないのなら、まだマシだけども。
いろいろ考えていると、琢磨がまるで空気を吐くように、当たり前のように、あっさりとこう言った。
「俺、やっぱり明るいオミソが好きだな」
「……えっ?」
ハッとして口に手を当てた琢磨。
「いや! 友達としてなっ!」
すぐにそう大きな声で叫んだ琢磨。
いや、そうだろうけども。
友達として以外の好きなんてないでしょ。
だから。
「うん、分かってるよ。私もまあ友達としては良いほうなんじゃない? ただし!」
「……ただし?」
「ちゃんと一緒にレシピ考えよう! こっちは仕事なんだぞっ!」
よっしゃ、言ってやった。
そう、仕事なんだ、このカフェは。
それに対して琢磨は屈託の無い笑顔になって、
「そうだなっ、俺も頑張るよ」
と言ってくれた。
そうそう、そういう素直なところ、合格です。
・【元気が出るメニュー】
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「ニンニク擦って顔に塗りたくってやろうぜ」
冷たい声でそう言い放った琢磨。
「そんなカフェあるかーっ!」
「いや大丈夫、オミソに塗られればアイツも納得するだろ」
「私が塗りたくないわっ! そんな酷いことしたくないわっ!」
何かあれからずっと不機嫌だったな、コイツ。
まあいいや。
「琢磨が真面目に考えないんだったら、私一人で考えるからっ」
そう言ってから私はレシピの本を見始めた。
すると、琢磨が一息ついてからこう喋り出した。
「オミソって、サヨナのこと好きなのか?」
「……好きって何?」
「好きってそのまんまの意味だよ、一緒にいたいかって話」
「まあ琢磨よりはね」
「そうか……」
ん?
もっと強い反撃がくると思ったけども、何かテンションが低いな。
まあいいか、続けよう。
「琢磨って私に悪口言ってばっかりじゃん、それに比べてサヨナさんは優しい言葉をいっぱい掛けてくれるしっ」
「……」
「そりゃキザなところあるし、誰にでもそうやっているんだろうなとは思うけども、悪口言われるんだったら当然サヨナさんのほうが好きだよ」
あっ、何かつい琢磨と比較しちゃっていたな。
でもいいか、だって実際にそうだし。
……いや何か暗いな! 琢磨!
ちょっと言い過ぎたかな。
私はオトナなんだから、ちょっと優しくするかっ。
アメとムチってヤツだよね。
と、優しい言葉を掛けようとしたその時だった。
「ゴメン……つい、オミソのリアクションが面白くて……」
いっ!
「いや! そんな本気で謝んなくていいよっ! 何それ! らしくないよっ!」
「いや、そりゃ嫌われて当然だよな、ゴメン、でも今も一緒にいてくれてありがとうなっ」
そう言って憂いを帯びつつも精一杯微笑んだ、みたいな表情をした琢磨。
いや!
いやいや!
「全然らしくない! 何なのっ! ここは悪口のタイミングだろ!」
「何それっ、悪口言われたいのっ?」
「いや! そういうことじゃないけどさっ!」
「フフッ、やっぱりオミソは面白いわっ、ゴメン、ゴメン、今の全部忘れて」
そう言って琢磨もレシピの本を見始めた。
いやいや。
まあ。
謝ったことは忘れる気無いけども。
何だ、ちゃんと謝る気はあるんじゃん。
というかまあ、楽しいから悪口言っているってことね。
まあ心底馬鹿にしているわけじゃないのなら、まだマシだけども。
いろいろ考えていると、琢磨がまるで空気を吐くように、当たり前のように、あっさりとこう言った。
「俺、やっぱり明るいオミソが好きだな」
「……えっ?」
ハッとして口に手を当てた琢磨。
「いや! 友達としてなっ!」
すぐにそう大きな声で叫んだ琢磨。
いや、そうだろうけども。
友達として以外の好きなんてないでしょ。
だから。
「うん、分かってるよ。私もまあ友達としては良いほうなんじゃない? ただし!」
「……ただし?」
「ちゃんと一緒にレシピ考えよう! こっちは仕事なんだぞっ!」
よっしゃ、言ってやった。
そう、仕事なんだ、このカフェは。
それに対して琢磨は屈託の無い笑顔になって、
「そうだなっ、俺も頑張るよ」
と言ってくれた。
そうそう、そういう素直なところ、合格です。