・
・【簡単に作れるトマトのレアチーズケーキ】
・
「じゃあ楽しみに待っているねっ」
カジエちゃんがカフェにやって来たので、最後の工程に取り掛かる。
事前に私たちはトマトのレアチーズケーキを作って冷やしておいた。
下の生地はビスケットで作った。
ビスケットをビニール袋に入れて、琢磨が棒で砕き、そこにハチミツとバターを入れて、揉んで馴染ませる。
丸い型にヘラで押さえながら全体に敷いて冷蔵庫で冷やす。
これで生地は完成。
次はトマトのレアチーズの部分。
トマトジュースに砂糖を入れて甘みを足したモノを沸騰させて、そこに粉寒天を加える。
そしてボウルにクリームチーズ、レモン汁、ヨーグルトを入れて混ぜ、そこに粉寒天を加えたトマトジュースを流し込む。
粉寒天ではなくて、粉ゼラチンで作る方法もあるんだけども、粉ゼラチンは動物性でカジエちゃんはあまり好きじゃないと昔から言っていたし、粉ゼラチンはカロリーが高いことに対して、粉寒天はカロリーが本当にゼロなので、私はあえてこっちを使った。
その分、レアチーズ感よりもトマト感のほうが強くなってしまうんだけども、それよりも私はヘルシーを推したい。
女子だから。
さらに別のボウルに生クリームと砂糖を入れて、氷水に当てながらとろっとするまで泡立てる。
その生クリームをさらにトマトのレアチーズ液に加えて、混ぜて、冷やしていた丸い型に流し込んで、冷蔵庫で冷やして固めて完成。
さらに私たちは今からそこに合わせる、ハーブティを作る。
お湯に漬けるだけのシンプルなハーブティだけども。
のど飴に使われやすいペパーミントに、アップルミントと、オーデコロン・ミントを合わせるミント尽くしだ。
トマトのレアチーズケーキとミントのハーブティをカジエちゃんの前に差し出した。
「うわぁっ、おいしそうだねっ、ハーブティの湯気だけでノドが良くなりそう」
「実際に、ハーブをお湯につけた湯気をノドに当てて癒すという方法もありますからね」
「そうなんだぁ、まずはハーブティから……はぁっ、清涼感にリンゴと柑橘系の香り、何だか心の奥から温まるぅ」
「お好みでハチミツをハーブティに入れて飲んで下さい」
「いや今はこのハーブの香りだけを楽しみたいかなぁ、いやぁ、鼻に抜ける香りだけで休まる……」
まずハーブティのほうは好感触だ。
問題はこのトマトのレアチーズケーキだ。
本来、粉ゼラチンで作るところを私は粉寒天にした。
果たしてどんな味になっているか。
「じゃあケーキのほうを頂くねっ、ピンク色で可愛いっ、じゃあスプーンですくって……んっ、おいしい! トマトの爽やかな風味にチーズやヨーグルトのような乳製品のコクがプラスされて、味わい深い! さらに下のスポンジもしっとりしていておいしい!」
どうやら今回もうまくいったみたいだ。
カジエちゃんが幸せそうに頬張ってケーキを食べる姿を見ていると、そのうまくいったことがよく実感できる。
「カジエちゃんはいつも動物性の食品はあまり好きじゃないって言っていたから粉ゼラチンじゃなくて粉寒天を使ったんだけども大丈夫かな?」
「うん! むしろこっちのほうが好きかも! 粉ゼラチンって何か変なクサみがあるんだけども、粉寒天は本当に無味無臭で全然主張していないと思うよ!」
そういえばカジエちゃんは元気にハツラツと喋り出している。
それくらいノドに良かったみたいだ。
良かったぁ。
「やっぱり琢磨くんとオミソちゃんは二人で料理作ったほうがいいね!」
「いやでも実際一人ずつで作ったことないから、もしかしたらそれぞれのほうがいいかもしれないですっ」
「ううん、オミソちゃん。絶対二人で作ったほうがいいって! 私は応援しているよ!」
”オミソちゃん”と私に話し掛けていたはずなのに、最後の”応援している”の部分で琢磨を見たカジエちゃん。
いや最後まで話している相手を見てくれよ。
そして何か分からんけども私のことも応援してくれよ。
……なんとなく琢磨のほうを見ると、琢磨は顔を真っ赤にしていた。
トマトみたいだ。
これからトマトのモノマネでもしようとしているのかな?
琢磨はまるでノドを痛めないようにしている感じで、小さな声でゆっくり喋り始めた。
「……カジエちゃん、分かりますか……」
「あっ! そうだねぇっ! まだ秘密だもんねぇっ! おっと、口を滑らせないようにしなきゃ!」
と言ってカジエちゃんはイジワルっぽく笑った。
いやでも秘密って何。
琢磨とカジエちゃんには何か秘密があるの?
何か腹立つな。
最初っから琢磨はカジエちゃんと仲良くイチャイチャしやがって。
何かムカつくんだよな。
モヤモヤするし。
何故か心の中に厚いモヤがかかるし。
何だろう、一体。
まあ何か二人だけの秘密みたいなノリを見せつけられることが腹立っているだけなんだろうな。
いやそれは腹立つわ。
それは腹立って当然だわ。私。
「まああとは若い者同士、お二人で楽しんだらいいんじゃないんですかっ!」
そう言って私はその場を去って、厨房でまったりしようと思ったその時、琢磨が私の肩を掴んで、
「いやいや何でもないから、俺だけ見ててくれよ」
と真剣な瞳で言った。
いや琢磨だけ見ていても別に何も起こんないだろ。
急に面白おかしくズッコケたりしないだろ。
まあ何か真剣そうだったし、許してやるか。
良く分かんないけども許す。
それもオトナか。
そのくせカジエちゃんが帰ったら、スッと厨房に一人で行ったりしたけども実際なんなんだ。
その”俺だけ見ててくれよ”って。
まあいいや。
私は私が見たいところを見ていよう。
とりあえず今は、そろそろ会計に行きそうなあやかしさんを目線で追うだなぁ。
その後。
カジエちゃんに妻籠宿の蘭川に案内してもらって、カジカガエルの合唱を聴かせてもらった。
そこで衝撃の事実が分かったんだけども、カジカガエルの体は黒かったのだ。
でもカジエちゃんの髪の毛の色は薄いエメラルドグリーンで。
何で黒じゃないの、と聞いてみると、これは染めているんだ、可愛いでしょ、って。
あやかしさんも普通に染めたりするんだと思った。
ちなみに、あやかしさんは体が汚れていくことは無いので、服は着っ放しで、一度染めたら染めっ放しでいけるみたいだ。
じゃあ髪の毛とかは伸びるのか、聞いてみたら、髪の毛などの成長を止めることができるそうだ。
長生きもするし、相変わらず便利だなぁ、と思った。
・【簡単に作れるトマトのレアチーズケーキ】
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「じゃあ楽しみに待っているねっ」
カジエちゃんがカフェにやって来たので、最後の工程に取り掛かる。
事前に私たちはトマトのレアチーズケーキを作って冷やしておいた。
下の生地はビスケットで作った。
ビスケットをビニール袋に入れて、琢磨が棒で砕き、そこにハチミツとバターを入れて、揉んで馴染ませる。
丸い型にヘラで押さえながら全体に敷いて冷蔵庫で冷やす。
これで生地は完成。
次はトマトのレアチーズの部分。
トマトジュースに砂糖を入れて甘みを足したモノを沸騰させて、そこに粉寒天を加える。
そしてボウルにクリームチーズ、レモン汁、ヨーグルトを入れて混ぜ、そこに粉寒天を加えたトマトジュースを流し込む。
粉寒天ではなくて、粉ゼラチンで作る方法もあるんだけども、粉ゼラチンは動物性でカジエちゃんはあまり好きじゃないと昔から言っていたし、粉ゼラチンはカロリーが高いことに対して、粉寒天はカロリーが本当にゼロなので、私はあえてこっちを使った。
その分、レアチーズ感よりもトマト感のほうが強くなってしまうんだけども、それよりも私はヘルシーを推したい。
女子だから。
さらに別のボウルに生クリームと砂糖を入れて、氷水に当てながらとろっとするまで泡立てる。
その生クリームをさらにトマトのレアチーズ液に加えて、混ぜて、冷やしていた丸い型に流し込んで、冷蔵庫で冷やして固めて完成。
さらに私たちは今からそこに合わせる、ハーブティを作る。
お湯に漬けるだけのシンプルなハーブティだけども。
のど飴に使われやすいペパーミントに、アップルミントと、オーデコロン・ミントを合わせるミント尽くしだ。
トマトのレアチーズケーキとミントのハーブティをカジエちゃんの前に差し出した。
「うわぁっ、おいしそうだねっ、ハーブティの湯気だけでノドが良くなりそう」
「実際に、ハーブをお湯につけた湯気をノドに当てて癒すという方法もありますからね」
「そうなんだぁ、まずはハーブティから……はぁっ、清涼感にリンゴと柑橘系の香り、何だか心の奥から温まるぅ」
「お好みでハチミツをハーブティに入れて飲んで下さい」
「いや今はこのハーブの香りだけを楽しみたいかなぁ、いやぁ、鼻に抜ける香りだけで休まる……」
まずハーブティのほうは好感触だ。
問題はこのトマトのレアチーズケーキだ。
本来、粉ゼラチンで作るところを私は粉寒天にした。
果たしてどんな味になっているか。
「じゃあケーキのほうを頂くねっ、ピンク色で可愛いっ、じゃあスプーンですくって……んっ、おいしい! トマトの爽やかな風味にチーズやヨーグルトのような乳製品のコクがプラスされて、味わい深い! さらに下のスポンジもしっとりしていておいしい!」
どうやら今回もうまくいったみたいだ。
カジエちゃんが幸せそうに頬張ってケーキを食べる姿を見ていると、そのうまくいったことがよく実感できる。
「カジエちゃんはいつも動物性の食品はあまり好きじゃないって言っていたから粉ゼラチンじゃなくて粉寒天を使ったんだけども大丈夫かな?」
「うん! むしろこっちのほうが好きかも! 粉ゼラチンって何か変なクサみがあるんだけども、粉寒天は本当に無味無臭で全然主張していないと思うよ!」
そういえばカジエちゃんは元気にハツラツと喋り出している。
それくらいノドに良かったみたいだ。
良かったぁ。
「やっぱり琢磨くんとオミソちゃんは二人で料理作ったほうがいいね!」
「いやでも実際一人ずつで作ったことないから、もしかしたらそれぞれのほうがいいかもしれないですっ」
「ううん、オミソちゃん。絶対二人で作ったほうがいいって! 私は応援しているよ!」
”オミソちゃん”と私に話し掛けていたはずなのに、最後の”応援している”の部分で琢磨を見たカジエちゃん。
いや最後まで話している相手を見てくれよ。
そして何か分からんけども私のことも応援してくれよ。
……なんとなく琢磨のほうを見ると、琢磨は顔を真っ赤にしていた。
トマトみたいだ。
これからトマトのモノマネでもしようとしているのかな?
琢磨はまるでノドを痛めないようにしている感じで、小さな声でゆっくり喋り始めた。
「……カジエちゃん、分かりますか……」
「あっ! そうだねぇっ! まだ秘密だもんねぇっ! おっと、口を滑らせないようにしなきゃ!」
と言ってカジエちゃんはイジワルっぽく笑った。
いやでも秘密って何。
琢磨とカジエちゃんには何か秘密があるの?
何か腹立つな。
最初っから琢磨はカジエちゃんと仲良くイチャイチャしやがって。
何かムカつくんだよな。
モヤモヤするし。
何故か心の中に厚いモヤがかかるし。
何だろう、一体。
まあ何か二人だけの秘密みたいなノリを見せつけられることが腹立っているだけなんだろうな。
いやそれは腹立つわ。
それは腹立って当然だわ。私。
「まああとは若い者同士、お二人で楽しんだらいいんじゃないんですかっ!」
そう言って私はその場を去って、厨房でまったりしようと思ったその時、琢磨が私の肩を掴んで、
「いやいや何でもないから、俺だけ見ててくれよ」
と真剣な瞳で言った。
いや琢磨だけ見ていても別に何も起こんないだろ。
急に面白おかしくズッコケたりしないだろ。
まあ何か真剣そうだったし、許してやるか。
良く分かんないけども許す。
それもオトナか。
そのくせカジエちゃんが帰ったら、スッと厨房に一人で行ったりしたけども実際なんなんだ。
その”俺だけ見ててくれよ”って。
まあいいや。
私は私が見たいところを見ていよう。
とりあえず今は、そろそろ会計に行きそうなあやかしさんを目線で追うだなぁ。
その後。
カジエちゃんに妻籠宿の蘭川に案内してもらって、カジカガエルの合唱を聴かせてもらった。
そこで衝撃の事実が分かったんだけども、カジカガエルの体は黒かったのだ。
でもカジエちゃんの髪の毛の色は薄いエメラルドグリーンで。
何で黒じゃないの、と聞いてみると、これは染めているんだ、可愛いでしょ、って。
あやかしさんも普通に染めたりするんだと思った。
ちなみに、あやかしさんは体が汚れていくことは無いので、服は着っ放しで、一度染めたら染めっ放しでいけるみたいだ。
じゃあ髪の毛とかは伸びるのか、聞いてみたら、髪の毛などの成長を止めることができるそうだ。
長生きもするし、相変わらず便利だなぁ、と思った。