今日は久しぶりの晴天。俺の気も晴れる。
「姉貴ー、できたぞー。起きろー。」
「んー、わかったー。」
俺の姉貴、水無月文音は今年から社会人、のはずなのだが・・・
果たしてこんなものなのか?少なくとも、俺のイメージとは180度違う。
そうこうしているうちに姉貴が降りてくる。
癖っ毛のせいで寝癖がひどい。
化粧をすれば俺でもかわいいと思うのだが、少なくとも今の姉貴から
そんな姿はかけらも想像できない。
「へぇ、今日はお茶漬け、珍しいじゃない。」
「いいからさっさと顔洗って来いよ。冷めるぞ。」
「うるさいな、分かってるよ。」そういって洗面所に向かった。
グーグー寝ていたから姉貴は知らないだろうが実は今日、俺も寝坊した。
つまり今日は手抜き料理だ。
ちなみに、俺の両親はというと、二人とも出張で帰ってくるのは盆と正月だけという何とも言えない生活を送っている。
実質、俺と姉貴の二人暮らしという状態である。
おまけに、飯は全部俺に丸投げである。
全く、もうちょっと手伝ってくれてもいいのに。
あれこれ考えている間に食べ終わってしまった。準備も終わっている。
「じゃあ、高校行ってくるから。鍵かけてけよ。」
「うるせえ、子供じゃねえっつうの。」
「ハハ、姉貴も頑張れよ。」そういって、ドアを閉めた。
「はぁ、なんであんな態度しかとれないんだろう。」
大学の時はもっと穏やかだったのに。海音にも優しく接していたのに。
私、どうしちゃったんだろう?
姉貴は変わった。本人が気づいているかはわからないけど。
高校生の俺に社会の常識はわからない。
だけど、もしこんな社会なら俺はごめんだ。
こんな、人が変わってしまうような社会なら。
私は中学、高校、大学と女子校だった。
だから、最初は男の人と一緒にいるのが怖かった。
だけど、みんな優しい人だった。だからその時は安心した。
だけど、だけど次第に怖くなっていったんだ。
この人たちは、「ありがとう」を忘れてしまっている。
学校では、「ありがとう」「すみません」が校訓だった。
だけど、ここには「ありがとう」がない。
上司は書類が間違っていたら部下を叱りつける。
そこには擬似的な「すみません」が存在する。
だけど、きちんと提出しても、間違いがなくても感謝の言葉がない。
今日の海音みたいに寝坊して手を抜くと怒られる。
だけど、たとえどれだけまごごろを込めても「ありがとう」がない。
我ながらよくできたたとえだと思うがそんなのはどうでもいい。
こんな、機械と同じような生活が、
そんな社会が私は怖くて、辛かったんだ。
そんなことをいつものように考えながら、私は家を出た。
ちゃんと鍵をかけて。
「海音、飯食いに行こうぜ。」
「ああ、いいぜ。」
この高校には学食ががあるので弁当を作る必要がない。
姉貴のほうは知らないが、向こうから要求してこないあたり、向こうにも食堂があるのだろう。
何にしろ、弁当を作らなくていいだけで俺の朝の時間がつぶされない。
ありがたい話だ。
「海音、何にする?」
「あー、じゃあ俺醤油ラーメンで。」
「ハハおまえは本当、ラーメンバカだな。」
「悪かったな、ラーメンバカで。」
「いやいや、褒めてるんだよ。これで今週コンプリート!」
「いや、それ絶対褒めてない。」
こんな他愛のない会話をしながら、俺たちは席に着く。
だけど、こんなことをしながらも考えているのはやっぱ姉貴のこと。
それに、今日の姉貴は、いつもよりもさらに苦しそうに見えたから。
今日も私はコンビニ弁当。
海音にねだれば作ってくれそうな気もするが、それでは海音の時間が奪われてしまうからという私なりの配慮だ。
だけど、やっぱ物足りない。今度、自分で作ってみようか。
「佐倉さん、ここ間違ってたから後で直しておいて。」
「あっ、はい。」
そういって私に置かれる書類の山。急に現実に引き戻される。
上から降ってくるのは小言、苦言ばかり。
決して労働環境は悪くないのだが、なぜここの人たちは「褒める」ということを知らないのだろう?
「人は褒めて伸ばせ」という慣用句があるがまさにその通りだと思う。
この世に叱って伸びる人はいない。
それで伸びると考えるのは昭和の考えだ。二時代も遅れている。
だけど、それを上司にぶつけるのは愚行そのもの。
結局、私も機械のようになるしかない。
この社会よ、早くいなくなれ。今日も私は働き続ける。
帰り道、姉貴からLINEが届く。
「ごめん、今日も遅くなりそう。一人で食べておいて。」
はぁ、まただ。ここの所、姉貴は帰るのがいつも遅い。
時刻は午後六時。姉貴は十時までは帰ってこないだろう。
姉貴と一緒に飯を食べる。それが俺の楽しみだったのに。
今では一食。それさえも失いかけている。
姉貴だって事情があるのだろう。それでも、姉貴に帰ってきてほしい。
姉貴と一緒に、また飯を食べながら笑いあいたい。
そんなことを、願ってはいけないのだろうか?
また、一人飯が待っている。
夜までもコンビニ弁当。いい加減飽きる。
金曜日の夜までも残業。プレミアムフライデーはどこ行った?
そんなことはどうでもいい。別にプレミアムじゃなくてもいい。海音と一緒に、またごはんを食べながら笑いあいたい。
そんなことを願うのは砂上の楼閣にすぎないというのだろうか?
また、一人飯だ。
「姉貴ー、できたぞー。起きろー。」
「んー、わかったー。」
俺の姉貴、水無月文音は今年から社会人、のはずなのだが・・・
果たしてこんなものなのか?少なくとも、俺のイメージとは180度違う。
そうこうしているうちに姉貴が降りてくる。
癖っ毛のせいで寝癖がひどい。
化粧をすれば俺でもかわいいと思うのだが、少なくとも今の姉貴から
そんな姿はかけらも想像できない。
「へぇ、今日はお茶漬け、珍しいじゃない。」
「いいからさっさと顔洗って来いよ。冷めるぞ。」
「うるさいな、分かってるよ。」そういって洗面所に向かった。
グーグー寝ていたから姉貴は知らないだろうが実は今日、俺も寝坊した。
つまり今日は手抜き料理だ。
ちなみに、俺の両親はというと、二人とも出張で帰ってくるのは盆と正月だけという何とも言えない生活を送っている。
実質、俺と姉貴の二人暮らしという状態である。
おまけに、飯は全部俺に丸投げである。
全く、もうちょっと手伝ってくれてもいいのに。
あれこれ考えている間に食べ終わってしまった。準備も終わっている。
「じゃあ、高校行ってくるから。鍵かけてけよ。」
「うるせえ、子供じゃねえっつうの。」
「ハハ、姉貴も頑張れよ。」そういって、ドアを閉めた。
「はぁ、なんであんな態度しかとれないんだろう。」
大学の時はもっと穏やかだったのに。海音にも優しく接していたのに。
私、どうしちゃったんだろう?
姉貴は変わった。本人が気づいているかはわからないけど。
高校生の俺に社会の常識はわからない。
だけど、もしこんな社会なら俺はごめんだ。
こんな、人が変わってしまうような社会なら。
私は中学、高校、大学と女子校だった。
だから、最初は男の人と一緒にいるのが怖かった。
だけど、みんな優しい人だった。だからその時は安心した。
だけど、だけど次第に怖くなっていったんだ。
この人たちは、「ありがとう」を忘れてしまっている。
学校では、「ありがとう」「すみません」が校訓だった。
だけど、ここには「ありがとう」がない。
上司は書類が間違っていたら部下を叱りつける。
そこには擬似的な「すみません」が存在する。
だけど、きちんと提出しても、間違いがなくても感謝の言葉がない。
今日の海音みたいに寝坊して手を抜くと怒られる。
だけど、たとえどれだけまごごろを込めても「ありがとう」がない。
我ながらよくできたたとえだと思うがそんなのはどうでもいい。
こんな、機械と同じような生活が、
そんな社会が私は怖くて、辛かったんだ。
そんなことをいつものように考えながら、私は家を出た。
ちゃんと鍵をかけて。
「海音、飯食いに行こうぜ。」
「ああ、いいぜ。」
この高校には学食ががあるので弁当を作る必要がない。
姉貴のほうは知らないが、向こうから要求してこないあたり、向こうにも食堂があるのだろう。
何にしろ、弁当を作らなくていいだけで俺の朝の時間がつぶされない。
ありがたい話だ。
「海音、何にする?」
「あー、じゃあ俺醤油ラーメンで。」
「ハハおまえは本当、ラーメンバカだな。」
「悪かったな、ラーメンバカで。」
「いやいや、褒めてるんだよ。これで今週コンプリート!」
「いや、それ絶対褒めてない。」
こんな他愛のない会話をしながら、俺たちは席に着く。
だけど、こんなことをしながらも考えているのはやっぱ姉貴のこと。
それに、今日の姉貴は、いつもよりもさらに苦しそうに見えたから。
今日も私はコンビニ弁当。
海音にねだれば作ってくれそうな気もするが、それでは海音の時間が奪われてしまうからという私なりの配慮だ。
だけど、やっぱ物足りない。今度、自分で作ってみようか。
「佐倉さん、ここ間違ってたから後で直しておいて。」
「あっ、はい。」
そういって私に置かれる書類の山。急に現実に引き戻される。
上から降ってくるのは小言、苦言ばかり。
決して労働環境は悪くないのだが、なぜここの人たちは「褒める」ということを知らないのだろう?
「人は褒めて伸ばせ」という慣用句があるがまさにその通りだと思う。
この世に叱って伸びる人はいない。
それで伸びると考えるのは昭和の考えだ。二時代も遅れている。
だけど、それを上司にぶつけるのは愚行そのもの。
結局、私も機械のようになるしかない。
この社会よ、早くいなくなれ。今日も私は働き続ける。
帰り道、姉貴からLINEが届く。
「ごめん、今日も遅くなりそう。一人で食べておいて。」
はぁ、まただ。ここの所、姉貴は帰るのがいつも遅い。
時刻は午後六時。姉貴は十時までは帰ってこないだろう。
姉貴と一緒に飯を食べる。それが俺の楽しみだったのに。
今では一食。それさえも失いかけている。
姉貴だって事情があるのだろう。それでも、姉貴に帰ってきてほしい。
姉貴と一緒に、また飯を食べながら笑いあいたい。
そんなことを、願ってはいけないのだろうか?
また、一人飯が待っている。
夜までもコンビニ弁当。いい加減飽きる。
金曜日の夜までも残業。プレミアムフライデーはどこ行った?
そんなことはどうでもいい。別にプレミアムじゃなくてもいい。海音と一緒に、またごはんを食べながら笑いあいたい。
そんなことを願うのは砂上の楼閣にすぎないというのだろうか?
また、一人飯だ。