「イヤーカフ」

「はい?」

「俺、親からもらった体を傷つけるの嫌いなタイプ」

「え?」

「それに女遊びよりももっと他のことが忙しくて、バイトとか」

「はぁ」

「ほら。話してみないと分からないだろ?」

 彼は想像よりも、口の端を大きく開けて笑っ
た。

 そして楽しそうに「じゃ」と手を上げて去って行く。

「ちょっと、これ!」

 手の中でコロッと転がるイヤーカフを落とさないように、そっと握りしめて彼を呼び止めた。

 それなのに、彼は止まってくれない。