ぼんやりしていると、再び誠さんが顔を出して一言付け加えた。

「俺、連れ子だから学さんと血は繋がってないよ。そこんとこよろしく」

 じゃ。と、手を振り、今度こそ彼はお店を出て行った。

 それ今、重要なこと? と、怒る気にもなれずに彼の去っていく後ろ姿を眺め続けた。

 ほら、やっぱりオムライスを作る男って碌な人じゃないんだから、ってよく分からない文言が取り留めなく頭の中を流れていく。

 自分の置かれた状況に、頭の理解が追いついていかない。

 だって、残されたこの人は誰?
 正解はほとんど導き出せているのに、知るのが怖い。

「ただいま〜。……あれ? お取り込み中?」

 店主らしき人の明るい声と共に軽やかなドアベルが鳴り、その軽快な音色に気が抜けて笑えてしまった。

fin.