じゃ本当に……。嘘、でしょ。

 背中を向ける誠さんは肩を震わせ、声を殺した。
 私は人目も憚らずに、声を上げて泣いた。

 誠さんしかいない店内で、声は虚しく響き、余計に悲しさを募らせるばかりだった。

 しゃくりあげる涙は、いつの間にか体をさすってくれている誠さんの優しさに、止めどなく流れ続けた。

 誠さんは手の温もりと同じ、優しい声色で問いかけた。
 その問いに私は涙に濡れ、途切れ途切れになりながらも答えた。

「忘れられないオムライスだったんだろ?」

「うん。うん。だってオムライスを作ってくれた父の後ろ姿は格好良くて、出来上がったオムライスは全然子ども向けじゃないの。旗も立ってないし。なのにすごく美味しくて、父の優しい笑顔が……」

 温かくて優しい手は、ずっと背中をさすってくれる。
 やるせない気持ちに、誠さんの優しさが触れて涙は枯れてくれない。

「オムライスは俺がこれからも作ってやるから。オムライスは……」

 声にならない返事を、何度も何度も頷いて返した。