「学さんはアルバイトに忙しくて、その上、舞台のオーディションが重なって。疲れてたんだと思う。赤信号で横断歩道を渡って……」

「そ、んな……。だって今も俳優を目指してるって」

 私は自分の意思とは関係なく、ハラハラと頬を伝う涙を拭くこともせずに、誠さんを見つめた。

 誠さんは私から視線を逸らし、俯いた。
 そして吐き出すように、言葉を口にした。

「言えるわけないだろ。生きていれば今もきっと俳優を目指してた。学さんなら諦めたりしない」

 そんな……。

 愕然とする私に、誠さんは消え入る声を掠れさせ続けた。

「俺は学さんを尊敬してる。それを、、生きているうちに本人に言いたかった」