私と誠さんのやり取りを黙って聞いていたホールの男性が、溜息をついて口を開いた。
「前に来た時、誠のこと話してたろ。それを誠に教えたの俺」
「え?」
この人は、何を言い出しているの?
私の疑問は置き去りに、彼は続けて話した。
「珍しく誠がお客さんのこと気にしてたから「あそこの客、お前のこと話してたぞ」って」
話をする彼は、楽しそうに腕を頭の後ろに組んで笑う。
「そしたら何、話してた? って言うから教えてやった」
だから知ってたんだ。
私達が話していた内容を、誠さんは知っているようだった。
「聞いた誠は急いで追いかけてさ。素知らぬ顔して話しかけてたよな」
これにはさすがに面食い、言葉の真意を探すように、話をする彼をマジマジと見つめた。