私は何も言えずに口を噤む。
 その中で、ただ誠さんの声だけがしていた。

「俺は学さんを応援してる。誰に何を言われようと、自分の夢を追いかけて人生を謳歌する学さんはスゲー人だ。ただ一人の父親だろ? あんたは二度と会えなくなっても、それでいいのかよ!」

 誠さんは怒りに任せるように顔を背け、そのまま奥の方へ行ってしまった。
 思ってもみなかった人の怒りに触れ、私は椅子へと崩れ落ちた。

 父が俳優を目指していたことはたった今、誠さんの話を聞いて初めて知った。

 好きで入っていた演劇部も、父と同じ道だと言われると急に色褪せて見えてしまう。

 もう卒業してしまったけれど、私が演劇部に入ると聞いた母の表情が曇ったのはそのせいだったんだ。