「学さんの娘か。言われてみれば似てる気がする」

 誠さんの呟きに、胸はジクジクと痛んだ。

 似ているとか『学』という名前とか、正直どうでも良かった。

「父は今、何をしてますか」

 つい口にした言葉に、自分自身が緊張して下を向いた。
 ドッドッドッと速まる鼓動が、耳をついて煩わしい。

「学さんはアルバイトをする傍ら、今でも俳優を目指してる」

「はい、ゆう……」 

「あぁ。まだ売れない俳優だけど。仕事の愚痴ばっか言う大人より、自分の好きなことをしてキラキラしてる学さんの方がずっと格好いい」

 熱のこもった声は、私の心に真っ直ぐに届いた。
 混じり気のない純粋さが、必要以上に私を苛立たせ、跳ねるように席を立った。

 この場に居られなかった。居たくなかった。
 目の前の景色がガラガラと音を立て、崩れていく気がした。