「……お父さん」

 この味はお父さんのオムライスだ。
 彼が私のお父さんなんだ。

 決してお父さんが大好きで、会いたかったわけじゃない。
 母と小さかった私を捨てたお父さんを恨みこそすれ、今さら感動の再会がしたかったわけじゃない。

 ただオムライスの味が忘れられなかっただけ。

 それがまさか、こんなに若い父親だったなんて。