スプーンを持つ手が震えそうで、グッと握り締める。
 そして思い切ってオムライスをすくい上げた。
 それを口に入れる。

 柔らかな半熟卵に濃厚なデミグラスソース、お米もそれらに負けないコクがある。
 野菜やベーコンの深みのある甘さを吸い込んだお米は、チキンライスとは違った美味しさだった。

「美味しい……」

 すごく美味しい。
 目を泳がせ、それでも鼻の奥がツンとして、我慢しきれない思いが頬へ流れ落ちた。

「なっ、泣くほどうまかった?」

 戸惑う彼の質問に何も返せずに、俯いていく頭で必死に考える。

 だって彼はとても若そうだ。

 そんなはずない。けれど間違いない。
 このオムライスだ。ずっと探していた味。