美耶子は、出掛けるのが凄く好きだった。休みの日になると、いつも父にねだって、当然だけど僕もついていった。出掛けると言っても、美耶子はまだ小さかったから割と近所のところが多かった。
「ねぇねぇパパ、公園行こぉ」
「わかったわかった、どこの公園? 」
「んんーとねぇ、ゴーカートのあるところ! ね、お兄ちゃんも行こぉ」
「ああ、わかったよ」
そんな風に、毎週出掛けたものだ。

美耶子の言ったゴーカートのある公園は、家から車で30分くらいの所にある。普段はあまり遠くへは行かないのだけれど、ある時ちょっと遠出しようと父が連れていった所、美耶子は気に入ったようだ。
「よぉし、着いたぞー」
父が車を止めると、美耶子は勢いよく扉を開けて飛び出した。

ゴーカートに乗って、パターゴルフをして、滑り台を滑って、、、とても楽しい時間を過ごした。よく言われる事だけど、そういう楽しい時間ほどあっという間に終わってしまうものだ。空はとても綺麗な夕焼けで、だけれど少し物悲しい雰囲気がする。今日も終わろうとしている。

公園を出て駐車場に停めた車へ向かう間、美耶子は何やら歌を口ずさんでいた。
『楽しい日々はずっとは続かないさ だから今楽しんで過ごそうよ』
そんな歌詞だった。年齢に似合わない、というのは置いといて、全くその通りだと思う。
ずっと同じところを歌っているから、何回目かで僕も覚えて、2人で歌った。楽しかった。

帰りの車はずっと寝た。僕も美耶子も。静かな車は、ゆっくりゆっくり自宅へと向かう。母は夕飯の支度を始めた頃だろうか。今日のメニューは何だろうか。そんなことを目を閉じながら想像していると、車のサイドブレーキが引かれた。