毎年この日になると、不思議な歌が聴こえてくる。その歌の正体が何か分からない。何だろう。
それは何故か僕の心を見透かしたような、言ってしまえば僕の歌で。よくテレビで心霊現象的な感じで取り上げられるのとは、一線を画している。母の子守唄みたいに心地よくて、すうっと眠くなってくる。優しい歌が、今日もまた聴こえるだろう。

「翔太!早くしないと学校遅れるわよ!」
あの優しい歌声と同じ人から発せられたのかすら怪しい怒鳴り声で、今朝も目覚めた。3学期が始まって数日経った、1月13日。僕は布団が恋しい気持ちを抑えて身体を起こし、朝食を食べるために一階へ降りた。既に父と母は食卓に着いており、いつものように朝の地方ニュースが流れている。ただ一ついつもと違うのは、両親と僕の表情だ。

1月13日。

僕たち有馬一家にとっては“悲劇の日”である。忘れもしない。あれは7年前の今日だった。