「じゃあ、俺戻るね。今日も虫除けよろしく〜」
「はあ?」
海斗はひらひらと手を振って教室に戻って行った。
タイミングを見計らったように瑞希は笑顔で寄って来た。
「ねーね! 聖夜、これ見て!」
机に雑誌を広げる。
「さっき友達と見てたんだけどー」
海斗の事なんて最初から無かったように振る舞う瑞希は、きっとまだ傷が残ってるんだろう。
仕方なく頬杖をついて、雑誌に目を通してやる。
でもまともに話を聞いてなかったから、何の話をしてたか覚えてない。
授業が始まり、髪の薄い数学の先生がハンカチで額を何度も拭きながら、喋っている。
ぽっかり空いた、隣の席。
いつもあいつが居るからかな。
なんだか、変な感じがした。