「顔が赤いね。はい、口を開けてくれるかな」


「あー」




口を開けると、たぬき先生はライトを照らして口の中を見た。
そして首を触ったり、聴診器で鼓動を聞いたりして、カルテに何か書く。




「はい、いいよ。薬を出してあげるから、待っててね」




たぬき先生はそう言って、チラリとお母さんを見た。
これは先生がお母さんに私の事を話す合図。


……少し前に気づいた、合図。


私は知らないふりをして診察室を出た。
そしていつものお母さんの決まり台詞。




「お母さん、ちょっとトイレに行ってくるわね」




ここ数年のうち、病院に来る度言うようになった。




「うん」




笑顔でそう言うと、お母さんはトイレの方へ行った。
椅子に身体を横にして、壁に掛かってるカレンダーを見た。