その瞬間、瑞希は海斗の胸板を強く、思い切り突き飛ばした。
何を話していたのか俺には聞こえなかったけど、瑞希の顔を見る限り良い事じゃない。
顔を真っ赤にさせ、瞳からは涙がすぐそこまで見えていた。
「あんたなんか……っ、大っ嫌い!! 嫌い嫌い!!」
言葉と同時に涙がポロポロと零れる。
そんな事も気に留めず、教室から勢い良く飛び出した。
「……何言ったの?」
「んー? べっつにー?」
あの変な威圧感の笑顔は消え、ため息を吐きながら口元を緩めて瑞希が去った後を見ている。
「どうせ、また意地悪い事言ったんでしょ」
「あは、バレた?」
「……嫌われてもいいの?」
「いいよ。てかもう嫌われてるし」
へらっと笑う海斗はどこか、悲しげだった。
自分がした事なのに、なんでお前まで傷ついてんだ。