市街地と言っても駅も小さいし、大きなビルもない。商店街らしき通りではほとんどの店がシャッターを降ろしている。


 お店を探してきょろきょろしていると、十字路の角に【オムライス】と大きく書かれたのぼりを見つけた。


 ここならゆっくり過ごせそうだ。


 古めかしい木の扉をそっと開けると、カランカランと鐘の音が響いた。


「こんにちは」


 誰もいない店内に小声で挨拶をして、おずおずと中へ入る。


「おばあちゃーん! お客さーん!」


 びっくりした! どこ? どこから声がするのっ!?


 唐突に男の子の声が響き、奥から優しい笑顔を携えた女性が姿を見せた。


「まあ、いらっしゃい」


 おばあちゃんにしては随分若く見える。四十代後半くらいだろうか。そういえばのぼりは出ていたけれど、準備中だったのかな。


「こんにちは。今の時間って営業されてますか?」

「ええ、大丈夫よ。ちょうど孫が遊びに来ててね。騒がしくてごめんなさい。どうぞ好きなとこに座って」

「ありがとうございます」


 本当におばあちゃんなんだ。ちょっと驚いた……。