『ううん、わたし全然頑張れてない。美輝と怜にも、あの事故で犠牲になった人達にもずっと会いに行けてなかった。わたしだけが無事だったっていうのに、わたしは慰霊碑に手を合わせることさえできなくて、本当にごめんなさい』

 背にまわされていた美輝の手が離れ、優しくわたしの頬をなでる。

『もう謝らないで。琴音は気にしすぎだよ。あんな怖い思いした場所なんて、簡単に行けるわけないじゃん。それなのに今はあの場所に向かってるんだよね……。でも、無理しなくていいんだよ』

 美輝は自分自身が生きられなかったのに、それでも尚わたしのことを考えてくれている。そう思うと余計にわたしが生き残ったことが罪に思える。

『違うよ美輝。無理なんてしてない。わたしはいつも自分勝手なだけだよ。だから仕事でもなんでも、人に迷惑をかけることしか出来ないんだよ!』

『誰にも迷惑を掛けない生き方なんて、きっとできないよ。それよりも、それを認め合って生きることのほうが大事なんじゃないかな?』

 子どものように泣きながら話すわたしを、夢の中でさえ美輝は優しく慰めてくれる。

『わかってるよ、そんなこと! でもわたし疲れたの! もう楽になりたいの! でも全部捨てたから……捨てられたから! これで許してもらえるんじゃないかって、そう思って慰霊碑に向かってるんだよ!』

 せっかく会いに来てくれたふたりに、感情に任せた言葉をぶつけるなんてどこまでも情けない。やっぱりわたしは、いつでも誰かに甘えてしまう駄目な大人なんだ。