ふーんとつっけんどんに返すと、美輝が間を取り持つように話し始めた。


「まあまあ琴音。子どもの頃の話だし機嫌直しなって。ねぇ、結弦。今はなんにもないもんね」

「もちろんだよ。今はなんとも思ってないよ」


 こんなに必死に弁解してくれるのだから、きっと嘘なんてついていない。そもそも結弦はわたしに嘘なんてつかない。でも、ちょっと意地悪を言いたくなって、その感情を美輝へと当て擦る。


「なら美輝は、怜にそんな相手がいたらどうする?」


 頭に両手をまわして高見の見物を決め込んでいた怜が、「えぇっ!? 俺かよ?」と叫んだ。


「いるの? あんた」


 途端に美輝の鋭い視線が怜に向けられる。当て擦りの被害者が増えた。


「い、いねえよ! そんな相手いるわけねえだろ!」

「動揺するとこが怪しいのよ!」


 美輝のひと言にふたりともびくっと肩を上げて生唾を呑んだ。その様子がおかしくて、わたしは堪らずふはっと吹き出して言った。


「あはははは。冗談だよふたりとも。わたし達、ほんとは疑ってなんてないんだから」

「なんだよ、だったらあんな言いかたすんじゃねえよ」


 怜がぶつぶつと文句を言うが、美輝はそれを「日頃の行いのせいでしょ」と笑い飛ばしていた。