部屋を出ると、美輝が男子部屋へと声をかけた。


「準備できたよー」

「先に下りて待ってて。すぐに行くから」


 格子戸の向こうから聞こえる結弦の声に「はーい」と返事をしてからふたりで階段を下りると、フロントに居た結弦のお祖母さんに声をかけられた。


「ふたりともお手伝いありがとうね。とても助かったわ。これからお出かけ?」

「はい、近所の駄菓子屋さんに行ってきます」


 さらっと言葉を返したわたしに、美輝が驚いた顔を見せる。

 そういえばこういうときって全部美輝が返してくれてたんだっけ。それに気づくと自分でも意外だなと思った。


「あぁ、駄菓子屋って、(あおい)ちゃんのところね。結弦、覚えてるのかしら」


 あおいちゃん? 苗字だろうか、名前だろうか、男の子だろうか、いや、ちゃん付けなんだから、きっと女の子の名前だ。