「琴音……」
「なに?」
「他にも怖い夢、見たんじゃないのか?」
夢の中で過ごした七年間が頭の中でフラッシュバックする。
いやだ、思い出したくない。思い出すのが怖い。
「全部話してごらん。今日一日怖かっただろ?」
その言葉でせきとめられていた感情が溢れ出し、見上げた星空が滲んだ。
わかっていた。夕食のときに泣いたのも、全部あの夢のせいなんだ。
孤独で先が見えない永遠とも思える暗闇の世界。
真っ暗な中からなんとか這い出して明日を見渡してみても、そこには誰もいなかった。
出口のない迷路を、裸足のまま傷だらけになるまで駆けずり回った七年間。その淋しくて恐ろしい夢の記憶が、心の隙間からわたしに牙を覗かせた。