シェイクを食べたカップとスプーンを洗ってしまったら、次は顔を洗って、メイクだ。
いつもより丁寧に顔を洗って、そのあといつもより丁寧にメイクをした。
下地を塗ったあとにクマの上にコンシーラーのペンシルを慎重に乗せながら思う。
今までの恋を。
恋をしてこうなったこと、クマを作るくらいに眠れなくなったり、もっと悪くして泣いたせいで目を腫らしてしまうようなこと。今までにもあった。
というか、好きであった彼氏に何度も振られていたのだから当たり前かもしれない。
当然のようにそのたびに傷ついて、泣いて。
振られたそのときだけではない。
彼氏が自分を見ていない。
自分に飽きた。興味がなくなった。
それを察知した時点でもうクマを作るくらい心を痛めてしまったものだ。
でも志月にはそれがなかった。
だって、向こうから言ってくれたのだ。
優しくされることを教えてあげます、と。
だからその言葉に、気付かないうちに甘えすぎていたのだろう。
思いあがっていた自分が嫌になる。最初はあれほど優しくされることを恐れていたのに。
人間の順応性がうらめしかった。
ほしかったもの。
手に入ってしまえばあって当たり前のことなんだと誤解して、思いあがってしまうようになる。
おまけに『嫉妬した』と指摘されて恥ずかしくも怒ってしまったのも、志月に甘えていたのだろう。近しい友達や家族にするように声をあげてしまったことが、それを示していた。
優しい志月はそれを許してくれるだろう、なんて無意識に思って、また甘えて。
謝らなければいけなかった。全面的に自分が悪い。
最初からわかっていたけれど、いや、口に出してしまう前から嫉妬の感情なんて感じたことすら自分が悪いとわかっていたけれど。
ああ、ほんとに最悪の事態、負の連鎖。
思いながらもベースができたあとはいつもどおりの手順でメイクをした。
オフィス用の、控えめなメイク。もう意識しなくても簡単に作れる。
朝ごはんもメイクも終わって、あとは着替えだけ。もう随分寒いのだからカーディガンの上に、薄手のコートも必要。何故か今日はいつもより余計に寒く感じた。
こんな気持ち抱いていたら当たり前か。
思って、カーディガンをいつもより少し厚手のものにしておいた。体だけでも冷やさないようにしないと、と思って。
支度ができて、誰もいない家だけど一応「いってきます」を呟いて。
いつもより丁寧に顔を洗って、そのあといつもより丁寧にメイクをした。
下地を塗ったあとにクマの上にコンシーラーのペンシルを慎重に乗せながら思う。
今までの恋を。
恋をしてこうなったこと、クマを作るくらいに眠れなくなったり、もっと悪くして泣いたせいで目を腫らしてしまうようなこと。今までにもあった。
というか、好きであった彼氏に何度も振られていたのだから当たり前かもしれない。
当然のようにそのたびに傷ついて、泣いて。
振られたそのときだけではない。
彼氏が自分を見ていない。
自分に飽きた。興味がなくなった。
それを察知した時点でもうクマを作るくらい心を痛めてしまったものだ。
でも志月にはそれがなかった。
だって、向こうから言ってくれたのだ。
優しくされることを教えてあげます、と。
だからその言葉に、気付かないうちに甘えすぎていたのだろう。
思いあがっていた自分が嫌になる。最初はあれほど優しくされることを恐れていたのに。
人間の順応性がうらめしかった。
ほしかったもの。
手に入ってしまえばあって当たり前のことなんだと誤解して、思いあがってしまうようになる。
おまけに『嫉妬した』と指摘されて恥ずかしくも怒ってしまったのも、志月に甘えていたのだろう。近しい友達や家族にするように声をあげてしまったことが、それを示していた。
優しい志月はそれを許してくれるだろう、なんて無意識に思って、また甘えて。
謝らなければいけなかった。全面的に自分が悪い。
最初からわかっていたけれど、いや、口に出してしまう前から嫉妬の感情なんて感じたことすら自分が悪いとわかっていたけれど。
ああ、ほんとに最悪の事態、負の連鎖。
思いながらもベースができたあとはいつもどおりの手順でメイクをした。
オフィス用の、控えめなメイク。もう意識しなくても簡単に作れる。
朝ごはんもメイクも終わって、あとは着替えだけ。もう随分寒いのだからカーディガンの上に、薄手のコートも必要。何故か今日はいつもより余計に寒く感じた。
こんな気持ち抱いていたら当たり前か。
思って、カーディガンをいつもより少し厚手のものにしておいた。体だけでも冷やさないようにしないと、と思って。
支度ができて、誰もいない家だけど一応「いってきます」を呟いて。