翌朝目が覚めて、鏡を覗き込んで。
寝不足でくっきりできてしまったクマを見ながら、幸希はためいきをついた。
泣いてはいないので目は腫れていない。けれどひどいありさまであることに変わりはなかった。
今日はアイメイクを少し念入りにしなければ、と思う。濃いメイクは好きでないけれど仕方がない。
コンシーラーを使って、ファンデーションも少し厚めに……。
考えながらまずはキッチンへ向かう。
しかしこちらも問題があった。食欲がないのだ。
おなかがすくわけもないではないか。クマができるほど眠れなくて、悩んでしまったのだから。
でも一日仕事をするのだから食べないわけにはいかない。
ちょっと悩んで、幸希が取り出したのはダイエットシェイクのパウチパックだった。牛乳と混ぜるだけで、おいしいシェイクができあがる。
ダイエットをしようと思っていた時期があったので、そのとき買い込んでいた。チェックすると賞味期限もきていない。冷やしていないのでひんやりおいしい、というわけにはいかないが、別段味が変わるわけではない。問題ないだろう。
このシェイクは名前のとおりダイエット用だが、もともとの目的は『摂取カロリーを減らすこと』。
そしてそれだけではないところは、『必要な栄養素をカットしないこと』だ。
つまり、必要な栄養を摂りつつ、軽く食べたいときにも向いている食べ物でもあるのだった。
牛乳は買い置きがあったので取り出して、用量を測ってシェイクと混ぜる。
選んだシェイクは白桃味。
何味でも良かったのだけど。味を選んで楽しむ余裕などないのだから。
シェイクは数十秒で出来上がる。それを持って居室へ戻って、起きたときにつけたテレビの前に座った。
もったりしたシェイクをスプーンですくい、口に運ぶ。
一応、おいしかった。そのくらいはわかる。
しかしそれで心が明るくなるかはまた別問題。
このダイエットシェイクを食べるのが久しぶりであるように、ここのところ、ダイエットもさぼりがちだった。
もともと太っているというわけではないけれど、ダイエットはいくつになっても女子の重要項目だ。立派な女子であるなら、体型維持のために、痩せようとしなくても体型や体重を気にすることは欠かせない。
さぼりがちになってしまった理由は、志月とあちこちおいしい店に行っていたこともある。
それが楽しくて、幸せで。
体重計に乗るのもご無沙汰だった。
そしてそれは示していた。
体重や体型を気にしないくらいに、気を抜いてしまっていたことを。今まではこんなことなかったのに。
いかに彼氏に好かれ続けるか。
そのために綺麗な自分でいられるか。
綺麗であれば愛してもらえる、なんて自分に言い聞かせていたから。
志月に対してそれ……体型に気を遣ったりそういうこと……つまり『愛してもらう努力』がなかった理由は明白だった。
心配しなくても、向こうから与えてもらっていたからだ。
溢れるくらいに、たっぷりと。
それに慢心してしまっていたこと。今ならわかる。
その思考は断片的に幸希の頭に浮かんだけれど、なるべく深く考えないようにした。
反省はしなくてはいけない。
けれどそれは今じゃない。
今必要なのは、感情を殺して、日常をこなして、会社へ行ってきちんと働くこと。昨日のことをどうこうするのはそのあとになってしまうが、社会生活をする以上、仕方がない。
これも言い訳だけど、なんて内心呟いて、次にまた、心の中だけでため息をついた。
そんなことを考えながらも黙々とシェイクを食べて、ごちそうさまでした、と呟く。
寝不足でくっきりできてしまったクマを見ながら、幸希はためいきをついた。
泣いてはいないので目は腫れていない。けれどひどいありさまであることに変わりはなかった。
今日はアイメイクを少し念入りにしなければ、と思う。濃いメイクは好きでないけれど仕方がない。
コンシーラーを使って、ファンデーションも少し厚めに……。
考えながらまずはキッチンへ向かう。
しかしこちらも問題があった。食欲がないのだ。
おなかがすくわけもないではないか。クマができるほど眠れなくて、悩んでしまったのだから。
でも一日仕事をするのだから食べないわけにはいかない。
ちょっと悩んで、幸希が取り出したのはダイエットシェイクのパウチパックだった。牛乳と混ぜるだけで、おいしいシェイクができあがる。
ダイエットをしようと思っていた時期があったので、そのとき買い込んでいた。チェックすると賞味期限もきていない。冷やしていないのでひんやりおいしい、というわけにはいかないが、別段味が変わるわけではない。問題ないだろう。
このシェイクは名前のとおりダイエット用だが、もともとの目的は『摂取カロリーを減らすこと』。
そしてそれだけではないところは、『必要な栄養素をカットしないこと』だ。
つまり、必要な栄養を摂りつつ、軽く食べたいときにも向いている食べ物でもあるのだった。
牛乳は買い置きがあったので取り出して、用量を測ってシェイクと混ぜる。
選んだシェイクは白桃味。
何味でも良かったのだけど。味を選んで楽しむ余裕などないのだから。
シェイクは数十秒で出来上がる。それを持って居室へ戻って、起きたときにつけたテレビの前に座った。
もったりしたシェイクをスプーンですくい、口に運ぶ。
一応、おいしかった。そのくらいはわかる。
しかしそれで心が明るくなるかはまた別問題。
このダイエットシェイクを食べるのが久しぶりであるように、ここのところ、ダイエットもさぼりがちだった。
もともと太っているというわけではないけれど、ダイエットはいくつになっても女子の重要項目だ。立派な女子であるなら、体型維持のために、痩せようとしなくても体型や体重を気にすることは欠かせない。
さぼりがちになってしまった理由は、志月とあちこちおいしい店に行っていたこともある。
それが楽しくて、幸せで。
体重計に乗るのもご無沙汰だった。
そしてそれは示していた。
体重や体型を気にしないくらいに、気を抜いてしまっていたことを。今まではこんなことなかったのに。
いかに彼氏に好かれ続けるか。
そのために綺麗な自分でいられるか。
綺麗であれば愛してもらえる、なんて自分に言い聞かせていたから。
志月に対してそれ……体型に気を遣ったりそういうこと……つまり『愛してもらう努力』がなかった理由は明白だった。
心配しなくても、向こうから与えてもらっていたからだ。
溢れるくらいに、たっぷりと。
それに慢心してしまっていたこと。今ならわかる。
その思考は断片的に幸希の頭に浮かんだけれど、なるべく深く考えないようにした。
反省はしなくてはいけない。
けれどそれは今じゃない。
今必要なのは、感情を殺して、日常をこなして、会社へ行ってきちんと働くこと。昨日のことをどうこうするのはそのあとになってしまうが、社会生活をする以上、仕方がない。
これも言い訳だけど、なんて内心呟いて、次にまた、心の中だけでため息をついた。
そんなことを考えながらも黙々とシェイクを食べて、ごちそうさまでした、と呟く。