買ってもらえるとなると途端にわくわくしてしまう。
 アクセサリー、雑貨……条件はワンコイン。
 流石に100円では安すぎるだろう。500円が妥当か。
 思いながらあれこれ見て回ったのだけど。
 幸希はある出店の前で足を止めた。
「見ていきますか?」
「うん」
 そこはガラス細工を扱うお店だった。値段もちょうど良さそうである。
 高級品ではないだろうが、日常に取り入れるにはこのくらいでもじゅうぶんだ。
 アクセサリーは勿論、文鎮のようなガラス玉、ストラップ、置物……種類は様々。
 その中で、幸希は子犬のマスコットに目を留めた。
 透けたブラウンが綺麗で、愛嬌のある顔。どこかの誰かを思い出させる。
 おまけにちょうど500円だ。
「これ、いい?」
「はい、勿論ですよ。かわいいですね」
 幸希の言葉は簡単に受け入れられて、戸渡はそれを買ってくれた。店主に代金を払って、割れないように簡単な緩衝材に包んでくれたそれを受け取る。
 「持ちますよ」と言われたけれど、「巾着に入るから大丈夫だよ」と幸希は持ってきていた赤い巾着に袋を入れた。
 包んでもらったのは、持ち手もないただの紙袋だったのだ。特にバッグのようなものを持っていない戸渡に持たせるより、自分の持ってきていた巾着に入れるのが合理的。
「犬、好きなんですか?」
 言われたので、幸希は、ふふ、と笑ってしまう。
「好きだよ。でもアレ、誰かに似ていたから」
 戸渡はきょとんとしたが、すぐに眉根を寄せる。
「まさか僕ですか」
「勿論」
 今度は戸渡が膨れる番だった。
「まさか犬に例えられるとは」
「戸渡くんは犬みたいなところがあるからね」
「褒めてるんですかそれ」
「勿論」
 戸渡はどうにも不満のようだったが、空気はほのぼのとしていた。