「今度、食事でも行かない?」
ただの業務の電話ではない電話が会社にかかってきて、幸希はうんざりした。会社の電話を私物化するなど。かといって、携帯番号やラインの交換などもっとごめんであるが。
「木曜はどう?」
テンプレのような、『不倫目的』の誘いであった。
家庭を持っている男性が別の女性に手を出そうと思ったら、家族サービスが必要になる金曜や土日以外になることが多いといわれている。女性向け雑誌や、webのコラムでも。そのくらいには愚かな男だ、とそこで既に幸希は思ってしまった。
新木課長自体、そういう目でなど見られないし、おまけにセカンドになんてなるつもりはなかった。
しかし、直属ではないとはいえ上司であるのではっきりとなど断れない。パワハラとセクハラを同時に受けているようなものである。
「すみません、ちょっと用事があるんです」
断ったものの、新木課長がそれで引くわけもない。
「じゃ、来週の月曜。それならどう?」
幸希は黙ってしまう。
二度、『用事がある』と言うのも躊躇われた。
「あの、……あ、すみません! ちょっと来客が。失礼します!」
結局無理のある電話の切り方をして、その場は逃れた。が、それだけで引いてもらえるはずもない。
なんと直接店舗に押しかけてこられたのである。適当な理由はくっついていたが、明らかに『別に課長自らやってこなくてもいい』という用事であった。
それでも、一応ほかの社員の目があるので、と楽観していたが、彼は相当図太かった。社内から幸希のデスクまでやってきて、デスクにもたれて話しはじめたのだ。
こんな場所では二人きりも同然ではないか。恐怖にも近い感情を覚えてしまう。
そして無理やり約束を取り付けられてしまった。
「じゃ、明日の夜にね」
心底嫌だと思っていたが、仮にも上司である。行かない選択肢などなかった。
ただの業務の電話ではない電話が会社にかかってきて、幸希はうんざりした。会社の電話を私物化するなど。かといって、携帯番号やラインの交換などもっとごめんであるが。
「木曜はどう?」
テンプレのような、『不倫目的』の誘いであった。
家庭を持っている男性が別の女性に手を出そうと思ったら、家族サービスが必要になる金曜や土日以外になることが多いといわれている。女性向け雑誌や、webのコラムでも。そのくらいには愚かな男だ、とそこで既に幸希は思ってしまった。
新木課長自体、そういう目でなど見られないし、おまけにセカンドになんてなるつもりはなかった。
しかし、直属ではないとはいえ上司であるのではっきりとなど断れない。パワハラとセクハラを同時に受けているようなものである。
「すみません、ちょっと用事があるんです」
断ったものの、新木課長がそれで引くわけもない。
「じゃ、来週の月曜。それならどう?」
幸希は黙ってしまう。
二度、『用事がある』と言うのも躊躇われた。
「あの、……あ、すみません! ちょっと来客が。失礼します!」
結局無理のある電話の切り方をして、その場は逃れた。が、それだけで引いてもらえるはずもない。
なんと直接店舗に押しかけてこられたのである。適当な理由はくっついていたが、明らかに『別に課長自らやってこなくてもいい』という用事であった。
それでも、一応ほかの社員の目があるので、と楽観していたが、彼は相当図太かった。社内から幸希のデスクまでやってきて、デスクにもたれて話しはじめたのだ。
こんな場所では二人きりも同然ではないか。恐怖にも近い感情を覚えてしまう。
そして無理やり約束を取り付けられてしまった。
「じゃ、明日の夜にね」
心底嫌だと思っていたが、仮にも上司である。行かない選択肢などなかった。