「おやすみなさい、デリック。」

「おやすみ、ソフィア。」

数十分程して、規則正しい寝息が聞こえ始めた。

「ごめん、本当にごめんなさい。」

デリックは苦しそうに謝罪の言葉を呟きながら、コートの内側のポケットから注射器の様な物を取り出し、ソフィアが眠っているベッドに近づく。
彼が持っているのはレオンに貰った"嫌な思い出を一時的に消す薬"だ。
レオンの説明によると、これは人が忘れたいと思っている記憶を封じ込める事が出来る薬らしい。
副作用とかは無いらしいが、"忘れられた"記憶はどんなに小さくても衝撃があれば思い出されてしまうらしい。
こんな怪しい薬ソフィアに使いたく無いが、やむを得ない。
彼女にはああ言ったが、二人だけで復讐なんて無理だ。
ソフィアにはそんな事しないで幸せに笑って暮らして欲しい。
手を汚すのは俺だけで良い。

「ごめん、ソフィア。」

デリックは彼女に薬を打つ。
心なしか、ソフィアが泣いているように見えた。