「最低限必要な物は入れといたから。安全を祈っているわ。」

アリアはそう言い私に大きな桃色の鞄を私に私に持たせた。

「色々ありがとう。
私、アリアみたいな友達が出来て嬉しいわ。」

「友達?」

アリアは驚いたように目を見開く。

「うん、友達でしょ。
家系とか関係なく一緒に食事をしたり、雑談をしたりする人は友達って本に書いてあったわよ。」

アリアは友達と呟きながら何か考え込んでから私を見た。

「私とソフィアさんは友達ね。」

アリアはそう言うと優しく、そして嬉しそうに笑った。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆


俺はソフィアに利益目当てや家の付き合いではない純粋な友達が出来た事が嬉しくて頬が緩むのを感じた。

「俺の言った事覚えてるよね。」

レオンはそっと俺に囁く。

「ああ、覚えてる。
何から何までありがとう。」

「別に良いって。俺たち友達だろ。」

彼はニヤリと笑う。

「そうだな。」

俺は素っ気なく答える。

「もしかして、ソフィアちゃんを騙すような形で連れて行くのに気が引けてるの?」

「........」

俺は何も答える事が出来なかった。
図星だった。

「言うか言わないかはデリック次第だけど、あんまり気に病むなよ。」

レオンははっきりとした口調で忠告するように言う。

「わかっている。」

俺はそう言いこれから俺とソフィアが次の村まで乗って行く荷馬車に目を向ける。

「世話になった。」

「また会いましょうね。」

俺たちは二人に別れを告げ、荷場所に乗る。

「二人ともお気をつけて。」

「バイバイ、また近いうちに会おう!」

二人とも荷馬車が発車するまで見送ってくれた。

「ソフィア、寒くない?」

俺は自分の隣に座っている少女と呼ぶにはもう遅くて女性と呼ぶにはまだ若い愛しい人に訊いた。

「コートを着ているから大丈夫よ。」

彼女はそう言って微笑んだ。
俺は彼女の俺を信じきっている無垢な笑顔に心が痛んだ。

俺は彼女に嘘をついている。
俺はソフィアに彼女の両親を惨殺した団体がうろついていて危ないから余熱が冷めるまで俺の知っている村に避難しようと言った。
彼女はあまり乗り気ではなかったが、俺の必死さが伝わってか、何も言わずに賛成してくれた。


だが、きっと新国に着いたら、二度と洋国に戻って来る事は無いだろう。

「ごめん...」

幸か不幸かソフィアは俺の肩に頭をのせて眠ってしまった為、俺の謝罪が彼女の耳に届く事は無かった。