11.
"Time travel タイムスリップ 2 "
== 都眞子の両親 (佐和子・敏夫) ==
佐和子の趣味で揃えたウォールナット材で作られたこげ茶色のダイニングテーブル
そして座席は革張りにしてあるダイニングチェアー、椅子の斜め後ろには
洒落た大きな観葉植物と共にsetもののように配列され背の低いキッチンボード
が備え付けられているお気に入りのダイニングルームで・・
都眞子の母、佐和子はここ1年ほどずっと胸に
抱えていた気持ちを夫の敏夫に吐露すべく、風呂から出た夫が
ダイニングテーブルに付くのを待ち構えていた。
「ねぇ、あなた・・早いもので都眞子ももうあと少しで
30才になろうとしてるんですよねぇ~」
佐和子は夫にお茶を出しながらしんみりと話しかけた。
「そうだなぁ。美保子が亡くなってから3年も経つのか。血の繋がる
甥とはいえ、仕事もあるのに土日返上で大の世話を中心になって
親身に大切に育ててきたと思うよ。我が娘ながらあっぱれだと私は思ってる」
「私がもっと健康体なら、都眞子に多くの負担をかけさせたりしなくて
済んだんですけどね。50才そこそこであちこち痛みがでちゃって身体に
自信が持てなくなってどうしても都眞子頼みになってしまって。だけどもう
何か別の方法を考えてでも大の問題を解決して、都眞子を解放してやらないと
いけない時期に来てるのかな思うの」
「実は私も最近そのことでずっと頭を痛めてた」
「ちょうど結婚適齢期で女性の一番いいと言われてる時期を大の為に
私たち家族のために使わせてしまって、悩ましいわね」
「その例えばというか、万が一というか、可能性として都眞子と義仁くんは
その、何もないんだろうか、ほんの少しでも結婚相手にっていうか・・
まぁ、こんなこと言っていいのか分からないが・・ふたりが一緒になれば
大にとっても私たちにとってもなかなかいいことだと思ったりするんだけどな
難しいかなぁ」
「ふふっ、同じようなこと考えてたのね。私もついついそうなってくれたらって
思わないことも。どうなのかしら。そういう風な目で都眞子や義仁さんの
様子を見てるけど、そういう雰囲気はあまりないみたいなのよね。こればっかりは
当人たちの気持ち次第だものね・・っていうかふたりの気持ちを尊重すること
が大事だと思うわ」
言葉とは裏腹に私は切に切にふたりの結婚を願っていた。
きっと夫も同じだろうと思う。
大に新しい継母ができるということがこの先どんな影響を大に与えるのか?
もし異母兄弟が1人ではなく2~3人になった場合大が孤立してしまわない
だろうかとか、継母に大切にされなかったら?とか、義仁さんが上手く
立ちまわってくれればいいけれど、新しい奥さんの言いなりで大を粗略に
扱うようになったら?とか、目に入れても痛くない大の未来に少しでも
不幸の芽があるとしたら・・そんなことを考えると私はすごく苦しくなる。
考えうる限りの不幸の芽を刈り取ってやりたい。
けれどやさしい子で健気な都眞子をこれまた不幸にはしたくない。
堂々巡りの思考をしていたら夫が言った。
