さらに一週間前、衣都は付き合っていた大学の同期で社会人の彼氏に『今は仕事を頑張りたい』という理由でふられた。友人関係から恋人に発展した彼だったが、本当に仕事が理由なのかは定かではない。

ただ、衣都にとって彼との別れはショックだったものの、不思議とあまり落ち込まなかった。

彼のことをは好きだったが、心の底から愛していたかと言われたら、すぐに頷くことはできない。

この人しかいないと思うほど誰かを本気で好きになったことは一度もなく、就職も決まらない。

ここまでくると、なにか人間的に問題があるのかもしれないと、衣都は自分自身について頭を悩ませていた。


子供の頃から元気だけが取り柄で、周囲の人たちにも『明るいね』とよく言われていた。

世話好きで友達の相談にもよくのっているし、お節介なところは少しあるけれど、性格的になにか大きな問題があるとは思えない。

容姿は特別綺麗ではなくいたって普通だが、愛嬌のある顔だ。

とくに染めていなくても、光が当たると少し茶色く見える髪は肩よりも少し上で切り揃え、前髪もパッツンだからか少し童顔に見えてしまうけれど、童顔だから就職が決まらないなどということはないだろう。