電車がガクンと大きく揺れた反動で、銀の手すりに側頭部を思い切りぶつけた衣都は、その痛みで目を覚ます。

座りながら視線を泳がせて外を確認すると、いつの間にか自分が降りる駅に到着していた。
鞄と白い封筒を抱え、前に立っている人に頭を下げながら慌てて降りる。


ホームを改札に向かって歩き出してすぐ、ベンチに腰を下ろした。
靴を脱いで前屈みになると、ヒリヒリと痛むかかとをそっと擦っている。

スニーカーを愛用している衣都にとって、パンプスはいつまでたっても履き慣れない。

顔を歪めながらかかとに絆創膏を貼ったあと、ため息をついて立ち上がった。


黒のリクルートスーツに身を包んでいる衣都は、ガックリと肩を落としながら駅から五分との家までの距離を歩く。


――今日もまたダメだったなぁ。


再び自然とため息が漏れる。結果はまだ分からないのだけれど、面接官の反応からだいたいの察しはつく。


大学を卒業してからの約八カ月間、受けた就職試験は数知れず。大学在学中も就活を行っていたから、実際は一年以上。

成績優秀というわけではなかったけれど、それなりに真面目に大学生活は送っていた。

大企業に就職したいなどと思っているわけでもなく、ただ人と関わるような仕事に就きたい。衣都の希望はたったそれだけ。

にもかかわらず、未だに一社からも内定をもらっていない。