恥ずかしそうに湯呑を持ったままうつむく衣都を、優しい眼差しで見つめる響介。
一見すると、結婚したばかりの若い夫婦にも見える。
それもあながち間違いではないのだが……。
「肩の力、少しは抜けましたか?」
「はい。ラベンダーティーのおかげで、落ち着きました」
衣都の返答に安堵の表情を浮かべた響介は、柱時計に視線を移した。
「では、そろそろ――」
「あ、あの!」
響介がなにを言うのか察した衣都は、テーブルに手をつき顔を上げた。
「えっと、もう少しだけ……話をしませんか? わたしたち、お互いのことをまだなにも知らないですし」
響介は唇をほころばせ、一段と優しい口調で「それもそうですね」と答える。
「って言っても、なにを話しましょう。趣味は、特にないし……」
自分から提案したはいいが、上手く言葉が続かない。