こぢんまりとした六畳の和室で正座をし、向かい合う若い男女。
ふたりの間には木製のちゃぶ台。そこに、口縁が薄く少し外側に広がっている小ぶりの湯呑茶碗がふたつ、置かれている。
ぴんと張られた真っ白な障子を通して部屋の中を染める夕日。心地よい畳の匂いと、漂う緊張感。
部屋の隅にいる一匹の黒猫は、我関せずといった様子で静かに丸まっている。
そんな中、若干強張った表情で頬にわずかな桜色を浮かべている彼女の名は深水衣都。
衣都は湯呑を両手で持ち、そのままゆっくりと口へと運んだ。
「……美味しい」
途端に眉が晴れ、朗らかな笑顔を見せる。
「ハーブティーは美味しいだけでなく、ハーブによって様々な効果があるんです。中でもこのラベンダーティーはハーブの女王と言われていて、とても人気があるんですよ」
衣都の向かいに座っている新堂響介の低く穏やかな声が、静かな部屋の中に優しく響く。