洗い物をしているだけなのにとても絵になる響介を眺めていると、お店の戸が開く音が聞こえてきた。
入って来たのは、制服を着た女の子。
恐る恐る中を覗くその姿に、衣都は数分前の自分を重ねた。
お店だと確信したのか、「ここ、いいですか?」と言って響介の返事を待たずにカウンターの一番手前に座った。
衣都の位置からだと、ちょうど女の子の横顔が見える。
スカートの丈は膝下、くるぶし辺りまでの白いソックス。髪は低い位置で一本にまとめている。
制服を見て、衣都はこの辺りにある中学の生徒だと気付いた。
「スイーツとかないんですか?」
目の前に置いてあるメニュー表を見ながら、女子中学生が尋ねた。
「申し訳ございません。どら焼き以外は全てドリンクとなっております」
「どら焼きだけ?」
「はい。この店で扱っているのは、主に縁ですから」
――……縁?