換気扇の回る音。私はその後に続く。
フライパンを出して、何かを作るらしい。
「生姜焼きを作ろうとしてる」
「生姜焼きは好き。じゃなくて職業」
「料理人」
え、とその顔を見上げる。同時に翡翠がこちらを向いたので、目が合った。
本当に料理人になっているとは。
「どこの? 何作ってるの? 食べに行きたい」
「ホテルの。なんでも作る。ご勝手に」
なんでも作る、なんて言ってみたい。
「鵠は何作れんの?」
フライパンに油が敷かれる。私は邪魔にならないようにキッチンから少し離れる。
冷蔵庫を開けてボウルを出した。