キッチンへ顔を出すと、翡翠が壁に寄りかかって手で顔を覆っていた。

声を押し殺して、泣いていた。

触れちゃいけないと分かっていても、私はその手を止められなかった。翡翠の裾を掴む。

私たちはやっぱり無力で、不器用で、それでも強く生きていきたくて。

美しい朝日がこれから何度も昇るように。
どんなに泣いたって、それが平気になるように。

何も言わずに翡翠は私を抱きしめた。

大丈夫だ、なんてお互い言わない。

「来てくれて、嬉しかった」

翡翠が呟くように言うのが聞こえて、私はそっちの方が嬉しかった。