その気持ちとの闘い。
学生時代をのほほんと過ごした私にとって、それも同様、初めてだった。

思い出しても辛かった。

辛かった、と過去形になっているから良かった。

「そしたらさ」

顔を上げる。翡翠がこちらを見ていた。

「翡翠の作ったご飯食べたいなーって思ったの。今後どうなるにしても、翡翠のご飯食べないとなって」
「……うん」
「だから来ちゃった」

翡翠が立ち上がった。キッチンの方へまた行ってしまう。
次は何を持ってくるのだろう、と待っていたけれども、戻ってこない。

不思議に思って私も立ち上がる。