「身体はそうじゃないけど、精神がどんどん蝕まれていってて。自分でも全然気づかなかったのね、でもある日急に電車に乗れなくなって」
マグカップを両手で包む。
ホームにできた行列。
通勤する人々がどんどん電車に乗っていく。
それをぼーっと見るしか出来なかった。
「もう始業に間に合わないって時間になると、ほっとしたの。反対側の電車には乗れたから、色んな商店街とかぶらぶらしてた」
「うん」
「そういうものに気を取られてる内は良いんだけど、ふともう疲れたなーって思っちゃって」
うん、と翡翠は無理やり相槌を打った。