鵠が静かに微笑む。

「最初は、確かに最後の晩餐にしようと思ってここに来たんだけど」

空が白んできた。辺りが明るくなる。
朝がくる。

「翡翠の作る料理を食べられるなら、こんな世の中も少しはマシに思えてきてさ」

鵠は自分のことをあまり自分から話さなかった。
話さなかっただけで、もしかしたら尋ねたら教えてくれたのかもしれない。

「貴方の作る料理にはそういう力があるよ」

そうやって、他人のことは簡単に舞い上がらせる。

光がビルの向こうから覗く。
鵠の髪に当たって、キラキラと反射した。