すぐそこに、鵠はいた。すぐそこ、玄関の外に。 ノブに手をかけようとしていたみたいで、謎の場所で手が固まっていた。 「……びっくりした」 「……それはこっちのセリフだ」 お互い驚いた顔をしていて、それから先に鵠が笑った。 「どしたの、仕事?」 寝起きの格好だけど、と面白そうにしている。 「お前が……変なこと言ったからだろ」 「変なこと?」 「最後の晩餐とか」 もう覚えてないだろう、と思いながら口にする。鵠が目を瞬かせた。 「懐かしいこと、覚えてくれてるね」 その言葉の真意は分からない。