「それは鵠のボキャブラリーが少ないだけなんじゃ」
「本当においしい。天才なの?」
その言葉に、翡翠が肩を竦める。
「それは言い過ぎだ」
「だって本当。私の最後の晩餐は翡翠の料理に決まった」
「最後に一緒にいられたらな」
「ずっと、は無理だけど」
ごちそうさま、と手を併せる。
翡翠が何かを言いたげにこちらを見る。
私も言いたいことがある。
「うち、四月に引っ越すことになったの。翡翠とずっと一緒にはいられない」
私たちはきっと、その時、強く感じていたと思う。
子どもは無力だ。
早く大人になりたい。
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