翡翠は私の近くに座って足を崩した。

「帰ってくるような気がして」
「お母さん?」
「まあ、その内帰ってくるんだけど。男と別れて。そんとき、物がなくなってたとか言われるの面倒くさいから」

平気じゃないけど慣れる。
慣れることで痛みは感じなくなるから。

「そんな、泣くようなことじゃない」

それは私に言っているというより、自分に言い聞かせているみたいだった。
そうやって自分を納得させているような。

翡翠も泣いたのかもしれない。

そんな空間の中、私のお腹の虫が叫びを上げた。

「え」
「お腹空いた……」