「確かに。変わってから苗字で呼ばれても気付かないことが多い」 「私なんて住所覚えらんないから。大変だよ」 「それは一大事だな」 翡翠はなんかいつも良い匂いがした。 香水使ってるの、と尋ねると、俺が使うように見えるか? と苦笑された。 「ただいまー」 母親が帰ってきて、リビングに来る。着ていたコートを脱ぎながら、私を見た。 何か言いたいことがあるらしい。 「うちの棟の五階の翡翠さんって知ってる?」 知ってるも何も、今日もクラスが同じだった。 そのままキッチンへ手を洗いに行く。