去年、こっちに引っ越してきた。

親の仕事で転勤が多くて、小学校から計三回引っ越している。

そのことを翡翠に話すのに、そう時間はかからなかった。

私は自分のことを聞かれるのが苦手だったし、翡翠はあまり私に質問したりしない。

「三回か」
「うん。小四と中二と高一ね」
「俺も三回、苗字変わってる」

遊んで帰る私と翡翠のバイト帰りが被って、並んで歩いた。

本格的な冬の風が頬を撫ぜる。

「そうなの? 自分の名前間違えちゃいそう」

首を竦めながら言葉を返す。翡翠が少し笑った。