忠犬ハチ公よろしく、私はその帰りを部屋の前で待っていた。
部屋の前で、だ。

「やっほー」

足音が聞こえて、手を振ってみせる。相手は足を止めた。

「おう」

少し驚いた顔をして、それから少し肩を竦める。

「腹減ってる?」
「減ってる」
「飯食いにきたんか」

ちょっと笑われた。鍵を出して家の扉を開ける。
私はその後ろに続いた。

「どうやってここ知ったんだ」

再度止まったその背中に顔をぶつけた。う、と声が漏れる。

私の高校時代のクラスメート、翡翠。

「翡翠のいるところは美味い匂いがするから」
「意味がわからん」